野咲 ★★★
”野咲を食べずして、松山グルメを語るなかれ”
”レストラン野咲”の周囲は、なぜかいつも興奮している ![]()
八年で十二億を手にした人々の気合いなのか?
八年でそれを大きく上回る損益に泣いた者達の怨念なのか?
手前の”茜屋珈琲”の、半額でも800円するキリマンジャロの香なのか?
角の”そば吉”の、石臼で挽かれた蕎麦の薫なのか?
多分、それは、野咲の食品見本を眺めているうちに、脳幹を直接刺激する、その油(小生はあえて脂とは書かない)の、匂いではなかろうか?
これが、”野咲ランチ(とんかつ、コロッケ)480円”である。
この横の洋風皿には、銀シャリが広く平べったく盛り付けされている。
オープンキッチンの向こうでは、いかにも”野咲”体型と、非”野咲“体型のコックコートをまとったシェフが、二人肩を揺らして働いている。
シェフに的確な指示を出すのは、フロアーを束ねるウエイトレス長![]()
実に小気味がよい ![]()
おっと、熱いうちにトンカツにナイフを入れなければ ![]()
ソースのたっぷりかかったど真ん中を1.5cmの幅に切り、平皿の上の銀シャリに載せる。
フォークの背中にのっけて食べるなんて、奇妙なマナーを唱えだしたのは誰なのであろう。
ソースをまぶしたトンカツは、フォークの腹で、飯の塊と共に大きくすくって、ほうばるのが良いに決まっている。
そして、むしゃむしゃと咀嚼するのだけである。
入口のベルを鳴らして、年配の夫婦が入ってきた。
”野咲ランチ、ライス少な目”と告げ、唯一空いた席に移動し慣れた様子で座っている。
さあ、
”スペシャルランチ(チキンカツ、ポークピカタ、エビ、魚のフリッター)660円”は、ここでは、上等な部類に入るメニュだ。
エビ・魚のフリッターは、もそっとした衣に包まれている。
叔母が縫ってくれた半纏の様な、分厚く温かい衣をまとっているのだ。
”サクリ”と半分くらいを目安に噛みつくと、半纏に蒸しあげされた白いフンワリした身が、湯気をたてて飛び込んでくる。
旨い!
確かに、”天麩羅”では無く、“フリッター”である。
”盛り合わせランチ(焼肉、カラアゲ、魚のフライ)780円”は、野咲で最も上等なメニュ。
どこにでもありそうなものなのに、これも妙に旨い
![]()
油濃くないのである。
そして、肉と衣にバランス良い味が付いている。
ガツガツと食べ進める傍らで、三人いるベテランのウェイトレス達は、言葉以外のサインを用い、客の注文、配膳、そしてテーブルのお冷を満たす事に芸術的なバランスを保っている。
さあ、
珈琲が出るが、のんびりとも行かない。
いつの間にか、入口の戸の近くには、二家族が立って待っている。
カランカラン
と鳴るドアを引いて、千舟町通りに戻る。
油の匂いがまとわりついてくるのだが、これは決して悪い気はしないのである。
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